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ジャパニーズウイスキーの父が学んだキャンベルタウンの名門ブランド

■日本に本場のスコッチウイスキーをもたらした人物ゆかりの地
日本のウイスキーはジャパニーズウイスキーとして、今や世界5大ウイスキー産地の1つに数えられています。
この国産ウイスキーの造り手のパイオニアが、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝です。
単身スコットランドに乗り込んだ政孝が、グラスゴー大学でウイスキー造りを勉強したのち、最終段階としてウイスキー造りの実習を行ったのがキャンベルタウンでした。
スコットランドには当時スコッチウイスキーの蒸留所が集まるエリアが多くあり、キャンベルタウンもその1つです。
このキャンベルタウンでのスコッチウイスキー造りにおいて、キャンベルタウンモルトと呼ばれる独特の風味を持つモルトを造り出したのが、スプリングバンク蒸留所でした。

■スプリングバンク蒸留所の歴史
スプリングバンク蒸留所の歴史は、1828年にリード家がライセンスを取得したことから始まります。
リード家は正式に蒸留所を設立する以前から酒造りをしていたとされ、いわゆる密造酒造りを手掛けていたわけです。
いつ頃から密造酒を造っていたかは定かではありませんが、1837年には財政難に陥り、婚姻によって親戚関係だったジョンとウィリアムのミッチェル兄弟に、蒸留所を売却します。
スプリングバンク蒸留所を軌道に乗せたジョンとウィリアムでしたが、1872年、ウィリアムは別の兄弟が運営する蒸留所に移ることになったため、ジョンの息子のアレクサンダーが加わります。
1897年、J&Aミッチェル社を立ち上げるものの、1926年に蒸留所は閉鎖してしまったのです。
1933年に蒸留所を再開するものの、1960年にはそれまで行っていたモルティングを廃止します。
1969年にウィリアム・ケイデンヘッド社を買収した翌年、またも蒸留所を閉鎖、1987年に限定的に蒸留所を再開した2年後に全面再開し、1992年には再びモルティングをはじめるという、目まぐるしく変わる波乱万丈な歴史を刻んできました。
紆余曲折を乗り越えたスプリングバンク蒸留所は、1999年に世界で初めてとなるオーガニック大麦を原料にしたシングルモルトウイスキー造りに成功します。
これにより、蒸留所内でモルティングを行う数少ない蒸留所として、キャンベルタウンの代名詞となるブランドとなったのです。

■蒸留所の名に由来する3つの蒸留器
キャンベルタウンモルトは塩辛いのが特徴で、スプリングバンク蒸留所では3基の異なる蒸留器からタイプの違う3つのシングルモルトを造り出しています。
シングルモルトはスプリングバンク、ピーテッドはロングロウ、3回蒸留はヘーゼルバーンと名付けられ、これらの名はすべてかつてキャンベルタウンにあった蒸留所に因んでいます。
奇しくもジャパニーズウイスキーの父と讃えられる竹鶴政孝が最終実習を行ったキャンベルタウンの蒸留所が、スプリングバンク蒸留所にその名を残すヘーゼルバーン蒸留所だったことに、日本のウイスキーとの縁を感じずにはいられません。
地元・キャンベルタウン産の大麦にこだわり、モルティングからボトリングまですべてをキャンベルタウンの地で行うことにこだわるスプリングバンク蒸留所は、世界的に知られるようになったウイスキーの知名度とは裏腹に、非常に小規模です。
生産能力がわずか75万リットルしかないのは、あくまでもキャンベルタウンの大麦とキャンベルタウンで造ることにこだわっているからこそでしょう。

■貴重な味わいが楽しめたらラッキー
生産量が少ないスプリングバンクですので、貴重な味わいが楽しめたらまさにラッキーと言えます。
その中でもスプリングバンク32年は、1971年に蒸留された、熟成年数32年のシングルモルトウイスキーです。
シナモンやバニラの香りにフルーツの香りが加わり、とても複雑な香りになっているものの、不思議と1つにまとまって香りが広がるのが特徴です。
レフィルのシェリーカスクのみを使って熟成されているため、美しいゴールドカラーをしています。