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ハイボール人気の立役者・サントリー角瓶

■ウイスキーブームの火付け役

「サントリーウイスキー角瓶」はサントリーの山崎蒸溜所と白州蒸溜所で蒸溜されたバーボン樽原酒を、絶妙のバランスで配合したブレンデッドウイスキーです。
山崎蒸溜所ならではのバーボン原酒の甘やかな香りと厚みのあるコク、そして白州蒸溜所の個性であるドライな後口が楽しめる仕上がりとなっています。
「サントリーウイスキー角瓶」が発売されたのは1937年（昭和12年）のことで、ボトルは独特の形をした亀甲模様と角ばった形状のガラス製ボトルが採用されました。
もともとは別の名前がありましたが、角型のボトルをしていたことから「角瓶」「や「角」の通称で呼ばれることが多く、それがそのまま正式名称の「角瓶」として採用された歴史を持ちます。
またジャパニーズ・ウイスキーの中では長寿ウイスキーとしても有名で、ウイスキー好きならそのおいしさを知らない人はいないと言っても過言ではありません。
また今日のウイスキーブームの火付け役となったハイボール人気は、この角瓶によってもたらされたとも言えるでしょう。
そのため角瓶はハイボールにするとよりいっそうおいしさが引き立ち、ウイスキーに馴染みがない人にも飲みやすいとして人気です。

■角瓶の生みの親

「サントリーウイスキー角瓶」が発売された1937年（昭和12年）は、サントリーがまだ「サントリー」と名乗る前だった「寿屋」時代に生まれたウイスキーです。
寿屋は後に世界的大企業となるサントリーホールディングス株式会社の前身で、創業者は鳥井信治郎氏でした。
鳥井信治郎氏は「国産ウイスキーの父」と称され、「日本のウイスキーの父」と称されるニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏とともにジャパニーズ・ウイスキーを語るうえでなくてはならない人物です。
1879年（明治12年）1月30日に大阪で生まれた鳥井氏は、丁稚奉公に出た13歳のときに洋酒への造詣を深めました。
その後1899年（明治32年）20歳のときに「鳥井商店」を興し、スペイン産ぶどう酒の販売を行います。
しかし全く売れない舶来品のワインだったため、1906年（明治36年）に日本人の口に合う「赤玉ポートワイン」を製造・販売しました。
そんな鳥井氏がウイスキーの製造に着手したのは1923年（大正12年）のことで、ウイスキー製造技術者として招いたのがのちにニッカウヰスキーを設立することになる竹鶴政孝氏だったのです。

■白札発売からときを経て誕生した救世主・角瓶

サントリー初のウイスキーとなった「白札」（後に「サントリーホワイト」に改名）は、初の国産ウイスキー誕生の瞬間でもありました。
「白札」が発売されたのは1937年（昭和12年）10月8日のことで、当時のキャッチコピーは「断じて舶来を要せず」という非常に強気なものでした。
これはウイスキーの本場・スコットランドでスコッチ・ウイスキー造りを学んできた竹鶴政孝氏と鳥井信治郎氏の信念によるもので、本物のウイスキーを届けたいとの思いが窺えます。
ところが本場のウイスキーは日本人にとって、「焦げ臭い」や「煙くさい」と酷評されるお酒でした。
当然ながら売上は伸びず、廉価なウイスキーとして1930年（昭和5年）に発売した「赤札」（後の「サントリーレッド」）も同様となりました。
「赤札」に至っては販売に苦戦した挙句、途中で販売中止に追い込まれたほどです。
そんなサントリーウイスキーの窮地を救ったのが「サントリーウヰスキー12年」で、このウイスキーこそが現在「サントリーウイスキー角瓶」と呼ばれている商品にあたります。
サントリーの上級ウイスキーだった「サントリーウヰスキー12年」は、草創期に竹鶴政孝氏が蒸溜した原酒をサントリーの貯蔵庫にて長らく保管していたモルト原酒が使われています。
この原酒をベースに鳥井氏が企画を起こしてブレンディングし、日本人の口に合うウイスキーとして造り上げられました。
寿屋は「角瓶」誕生までの間にウイスキー事業で大きな損失を抱えていましたが、「角瓶」はその損失を一気に一掃するほどの救世主となったのです。