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発想の逆転で生まれた飲みやすさを追求した「ザ・ブレンド・オブ・ニッカ」


■ニッカウヰスキーの創業者が極めたブレンド力が際立つ銘酒

1986年にニッカウヰスキーから発売された「ザ ブレンド オブ ニッカ」は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝が極めたブレンドの心を技が受け継がれたブレンデッドウィスキーです。
厳選した余市モルトと宮城峡モルトを使用している「ザ ブレンド オブ ニッカ」は、通常のブレンデッドウィスキーとはモルトの比率が異なっているのが大きな特徴です。
モルト原酒をベースにグレーン原酒をブレンドするブレンデッドウィスキーは、通常はグレーン原酒よりもモルト原酒のほうが比率が高くなっています。
しかし「ザ ブレンド オブ ニッカ」はグレーン原酒の比率を高くすることによって、モルト原酒の個性を和らげていました。
柔らかで優しい口当たりが特徴のグレーン原酒の比率を上げることで、モルト原酒の個性である豊かな香りと味わいを引き出すことに成功したのです。
「ザ ブレンド オブ ニッカ」の芳醇なモルトの香りと飲みやすい口当たりの良さは、まさにモルトの比率を反対にするという発想の逆転から生まれたものでした。
また「ザ・ブレンド」シリーズにはほかにもいくつかの商品がありましたが、「ザ ブレンド オブ ニッカ」660mlが2015年8月に終売となった後は50mlと330mlも終売となり、現在は全ての「ザ・ブレンド」が終売品となっています。
しかし市場にはまだわずかながらも流通している商品がありますので、モルトの豊かな風味とグレーンの飲みやすさを追求して誕生したモルトベースウィスキーの味わいをぜひ堪能してみてください。

■シンプルなデザインのボトルとラベル

四角いデザインのボトルとなっている「ザ ブレンド オブ ニッカ」は、グラフィックデザイナーでありプロダクトデザイナーの原研哉が手掛けたものです。
同じくシンプルなデザインのラベルは佐々木豊の手によるもので、琥珀色の液体が映える何とも美しいボトルに仕上がっています。
ラベルには「The Blend of Nikka Maltbase Whisky」と書かれただけのシンプルさですが、厚みのある透明のガラスボトルとウィスキーの色合いをより際立たせることになりました。
また660mlの「ザ ブレンド オブ ニッカ」ボトルはキャップに「ウィスキー特級」の表示と、「アルコール分45％ 従価税率適用」と書かれているのが読み取れます。
「ザ ブレンド オブ ニッカ」が発売された1986年当時、日本ではまだ1953年に制定された古い酒税法が適用されていました。
1989年に酒税法が廃止されてからは特級表記は消えましたが、それ以降も販売が続いた「ザ ブレンド オブ ニッカ」には特級表記のあるものとないものが存在します。

■ニッカウヰスキーの歴代マスターブレンダーたち

ニッカウヰスキーの初代マスターブレンダーはいわずと知れた竹鶴政孝その人で、2代目マスターブレンダーに就任したのは甥で養子となった竹鶴威（たけつる たけし）です。
政孝は威の母・延代の弟で、政孝とリタとの間に子どもができなかったことから、威は1943年に政孝とリタ夫妻の養子となりました。
そのため威にとって政孝はおじから養父の存在となり、後継者として1949年に政孝が設立した大日本果汁株式会社に入社します。
1964年には北海道工場長として政孝からブレンディング技術を学び、政孝が1961年に亡くなった愛妻・リタへの哀悼と感謝を込めて造り上げた「スーパーニッカ」のブレンドを威が共に行ったことはよく知られています。
1979年に政孝がこの世を去ってからは、2代目マスターブレンダーとしてニッカウヰスキーの伝統を守り続けます。
そして常務取締役と専務取締役、代表取締役専務を経て、1985年に代表取締役社長に就任しました。
3代目マスターブレンダーを務めたのは佐藤茂生、4代目マスターブレンダーを務めたのは山下弘で、現在はチーフブレンダーである佐久間正が品質管理の重責を担っています。
そして1986年に誕生した「ザ ブレンド オブ ニッカ」以前から続く、ニッカウヰスキーの偉大なマスターブレンダーたちのブレンドの技を継承し続けています。